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味は絶品! 実力はトップクラス 伸びしろが大きい、カンキツ『甘平(かんぺい)』

公開日:2020.2.20

KILO77です。新食感がたのしめるカンキツ、そして、香りがよく、切れの良い甘さが後を引く、絶品おすすめのカンキツを見つけました!

新食感の『サンセレブ』

「飯島さん、2月はどんな感じです?」

2月の棚は、雑柑類であふれるよね。いろいろな味、いろいろな食感のカンキツが出荷されるから、バリエーションを味わいたいひとは、今がベストシーズンだよね」

「この、『サンセレブ』って、美味しそうじゃない?」

「ゼリーオレンジって触れ込みで販売しているんだ。じょうのうが非常に薄く、ゴワゴワする食感も、ツブツブする食感もない、不思議なカンキツなんだ」

「新しい食感の果物か。その方向性もアリですね」

「食感は良いんだけど、味がね。『紅まどんな』と比較されるんだけど、糖度がイマイチ。でも、栽培技術がもう一段進歩すれば、いつか化けると思うよ」

「食感が斬新だけに、今後どう印象を残しつつも、味の改良をすすめるかに課題があるわけだ」

雑柑の本命「甘平(かんぺい)」

KILOさんにおすすめしたいカンキツがあるんだ。これ、『甘平(かんぺい)』」

「カンペイ! 面白い名前ですね。ベテランのラグビー経験者ならきっと、あのサインプレーを思い浮かべるはず」

「ここ、5~6年で出てきた品種で、甘みも酸味もほどほどあるから、食べておいしい。2月の雑柑激戦期間、イヨカン、ポンカン、ハッサクに加え、ミカン系の『せとか』、デコポンの兄弟『はるみ』と、味自慢が勢ぞろいする中、『甘平』は頭一つでてると僕は思うよ」

「『せとか』を超えてるんだ。でも『せとか』は、結構名が知られているカンキツですよね」

「『甘平』と『せとか』は市場デビューはほぼ同時期だったんだけど、『せとか』の方が市場評価が高かった。なぜなら、『せとか』がなめらかな表皮に対して、『甘平』の表皮はデコボコ・ざらざらしていて高級感がない、化粧箱に入れても映えないとの判断なんだ」

「なるほど、表皮のテクスチャー(質感)も、商品の評価に影響してくるのね。贈答用だと、その評価基準も理解できるな」

「さらに、店で風に当てると、乾燥で、表面のデコボコが強調されちゃうのも、評価を落としたゆえんかな」

「なんとか、味だけで勝負できないものでしょうかね」

「そこで、産地も、収穫されたものの中から、比較的見映えの良いものを選抜したものを『クイーンスプラッシュ』と銘打ち出荷し、太田市場では10個入りで開始価格5,500円でセリにかけられているようになってるんだ」

「今後が楽しみな『甘平』ですね」

 

というわけで、『サンセレブ』と『甘平』を購入し実食してみました。

想定外食感が笑顔を誘う『サンセレブ』

『サンセレブ』は、大分県柑橘試験場(現大分県農林水産研究指導センター農業研究部果樹グループ)において、温州ミカンの『大津八号』に、オレンジの香りを持つ『天草』の花粉を交配し育成され、平成21年3月に「大分果研4号」として品種登録されました。

手にした感じはおミカンですが、若干皮が薄いかな。『サンセレブ』のリーフレットには、カットフルールとして召し上がれ、とあるので、包丁でオレンジのように切ってみました。

カットした『サンセレブ』。このままかぶりつく。ツブツブ感がなく、じょうのうのモサモサ感もないので、新食感に「おっ?!」となる。
半分にカットした様子。じょうのうはとても薄い。品種改良の目標とされていたのは確かだが、今後、糖度も追及してもらえれば、もっともっと引き合いが強くなると思う。
果皮をむいてみたところ。これでも食べられるけど、カットしたほうが見栄えがいい。ほんと、口当たりの良さだけだったら雑柑類中トップなのでは。ちなみに可食率は82.5%でした。
つぶは確かにあるんだけど、口の中では感じられない。じょうのうが薄いからと言ってみずみずしさは失われていない。おもしろいカンキツだ。

ゼリーオレンジと謳い文句にあるとおり、今まで体験したことのない食感が最大のウリである『サンセレブ』。伸びしろは、味・糖度にあるのではと、素人ながらに感じました。ちなみに私の糖度計で測ったところ11度でした。一般的なミカンの平均糖度の範囲内です。これで良しとするのかは、消費者の声にかかっていると思います。

 

糖度向上や果皮障害の防止のための高品質化に向けた試験研究が行われ、全面マルチやカルシウム剤散布による技術開発もされているようです。糖度が14度ぐらい出てくると、消費がグンと伸びていくのではないでしょうか。甘すぎるかな。

 

咀しゃくする力が衰えた人には、ちょうどいい果物であると感じました。喉につっかえることもなく、するっと喉を通る『サンセレブ』は子どもから大人まで、食べたら笑顔になる、みんなで楽しく食べられる雑柑類です。

 

参考URL

オリジナル品種「大分果研4号」の特性

https://www.pref.oita.jp/uploaded/attachment/2032504.pdf

「大分果研4号」(ゼリーオレンジ・サンセレブ)の高品質化技術

https://www.pref.oita.jp/uploaded/attachment/1012595.pdf

いずれも大分県農林水産研究指導センターHPより

絶妙なバランスで成立している『甘平』の美味しさ

さて、今回の大本命。『甘平(かんぺい)』を食べてみました。薄い果皮はむきにくく、爪を立てると実を傷つけてしまいそうなので、慎重に剥いていきます。果皮は、確かにボコボコしていますが、剥くたびにカンキツの高貴な香りがフワッと立ち上がってきます。この香りは身にまといたい! 『4711ポーチュガル』を想起させる香りです。口の中に一房、頬張ると……。

左が『甘平』、右が『せとか』。「果皮はボコボコだけど、美味しい」と周知されれば、化粧箱映えしないなどの低評価は払しょくできるのでは。あの『不知火』だって、当初、評価が実力とマッチしていなかったのではないでしょうか。
果皮をむいてみました。皮は薄く、剥きにくいですが、みがぴっちりと詰まっています。じょうのうは、不知火(デコポン)などと同じぐらいの厚さに感じました。個人的には、じょうのうをモグモグするの好きなんです。
この『甘平』は、愛媛県立果樹試験場にて、『西之香』に『不知火』の花粉を交配して育成された品種だそうです。『不知火』の遺伝子が利用されていたんですね。果皮のボコボコは『不知火』譲りだったのかな。

絶品!! 『甘平』の味は、トップクラスです。濃厚な甘みと、すぐに次の房を頬張りたくなるクエン酸がもたらすキレの良さ。そして体が浄化されているのではと錯覚させるような、柑橘の芳香が口の中一杯に広がります。これはおいしい。はっきり言って、おいしい!! 糖度を測ってみたところ14度ありました。可食率は88.5%。申し分ない数値です。ファンになりました! 好きです『甘平』!

 

参考URL

カンキツ新品種“甘平”について

https://www.pref.ehime.jp/kashi/kenkyu/documents/22-1_2.pdf

愛媛県農林水産研究所果樹研究センターHPより

……というわけで、好き勝手に素人が美味い旨いといっておりますが、この品種が世に出るまで、たくさんの研究者、現場の方、生産者の方の努力があることを、忘れていません。本当に、バラエティ豊かなカンキツ達を生み出してくれてありがとう! 感謝してます。果物をたべて、感動するとは、思わなかった。

それではまた!

次回、KILOは3月26日に登場します。

管理釣り場の「鳥害」の考察リポートもする予定です。

追伸

絵は『ラブライブ!』のキャラクター、高海千歌さんです。

むさしやさんで見つけました。『西浦みかん寿太郎』とアニメ『ラブライブ!サンシャイン』がコラボ。出荷箱はキャラクターを配したオリジナルデザイン。

寿太郎自身は、2月下旬に出荷されるミカンの最後出荷的な感じだそうです。味は、飯島さんによると「無難なミカン」。無難が一番だったりする。ところが、このコラボ企画で、なにやら騒動がおこっているみたいです。私は全く問題ないと思いますよ。本当に残念。

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