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ウインターガーデンの貴婦人

公開日:2020.3.3 更新日: 2020.3.4

こんにちは、づみたんです。

3月になりましたね! カレンダーを一枚めくるごとに、ぐんぐんと春めいている気がします。

さて、そんな本日は冬の終わりから春のはじめにかけて咲く「クリスマスローズ」のお話でも。

先日、「第18回 クリスマスローズの世界展」(2020年2月21~23日開催)を訪れました。

都内・池袋のサンシャインシティで開催された【クリスマスローズの世界展】は、毎年恒例のクリスマスローズの展示会(昨年、カルチべブログ内でお伝えした展示会の様子はコチラ)。

今年は『幻想の森』をテーマにしたアレンジメント作品の展示や、全国各地の有名育種家によるオリジナル交配品種、希少品種が勢揃いする『プロフェッショナルが創る、花たちの集い』、毎年コレを楽しみに訪れるという人も多い『クリスマスローズ銘品オークション』などが開かれました。

今回のテーマは「やすらぎの早春」。ということで、会場に一歩足を踏み入れると、そこには無数のクリスマスローズの花が出迎えてくれました!入口に展示されていた花たちの様子を少しだけご紹介します。

1924年創業、日本におけるクリスマスローズのパイオニアナーセリー「花郷園KAGOEN」(東京都)さん。淡くやわらかいピンクの花色が綺麗です。クリスマスローズは「レッドサン」、「パピエ」シリーズなど特徴ある上向きシリーズを中心に取り扱っています。

埼玉県東松山市でクリスマスローズの生産・育種・販売を行う「加藤農園」(埼玉県)さん。愛好家の方々と共に行っている品種改良や趣味性の強い交配が特徴です。今シーズンは4000交配行い、約6万株の栽培をしたそう。

童仙房ナーセリー&ガーデン」(大阪府)さんは50年以上常に本物の品質を追い求めています。ニゲルやニゲル系ハイブリッドの生産などに力を入れていて、各家庭にシンボルフワラーにふさわしい花の提案なども行っています。

富士山麓の環境を活用し、クリスマスローズやアネモネ・パボニナ、日本スミレなどの宿根草を中心にしている「新舟ナーセリー」(静岡県)さん。原種との交配により草姿がコンパクトで小輪多弁なクリスマスローズの育種を得意とされています。

栽培地が山形の雪深い山間部にある「堀切園」(山形県)さんは、各地の園芸店に並ぶ「ウインターシンフォニー」が有名。ぬくもりのあるクリアで鮮やかな点が特徴の花色は会場でも非常に際立っていました。

岩手県滝沢市という雪深い地で待ちわびる春に凛と立ち上がってくるわくわくするような花を作りたいと願う「百花」(岩手県)さんからは、育てやすく個性的な株づくりにこだわったクリスマスローズの展示。独特の雰囲気やたたずまいには、会場の人々を魅了していました。

 

「取材」と言いつつ、個人的に開催を待ちわびていた一人でもある私はこの時点で多幸感に包まれていたの、で・す・が…! 次なる特別装飾でも息をのみました。

『幻想の森』ではクリスマスローズの花が宿った森の中にたたずむ古木をイメージ。枯木に瑞々しい緑や色とりどりの花を合わせることで冬から春への季節の移ろいを表現しているそう。装飾を手掛けるのは2013年花いけバトル年間王者で、いけばな松風副家元の塚越応駿さん。

今年は新型コロナウイルスの影響もあり、開催自体や当日の来場者数も危ぶまれましたが、取材に伺ったところ、「例年よりも少々客足は途絶えがちだったものの、今回も開場前から入口に並ぶ多くのお客さんの姿に支えられた」とスタッフの方が教えてくれました。

たしかに、入口付近でも撮影の順番待ちをするお客さんが列を成し、プロフェッショナルである育種家の方々とクリスマスローズについて熱く語るみなさんの姿が印象的でした。

ということで! ここからは「今年は残念ながら足を運べなかった…!」という方のためにも、リポート風に全国各地のナーセリーさんと、個人的に気になった注目の品種をお届けします。

浅間クリスマスローズガーデン」(長野県)さん。信州の冷涼な気候を生かし、クリスマスローズ原種の育種生産に力を入れる国内唯一のナーセリー。原種の魅力は何と言っても野趣あふれる草姿と渋めの花、その魅力を信州から全国のクリスマスローズ愛好家に届けて下さっています。

「片山農園」(岡山県)さんは、標高450mの岡山県北の湯原の涼しい環境でクリスマスローズを栽培しています。ここでは良質な山土や真砂土が取れるので、堆肥を長年寝かせて腐葉土を作ったり、燻炭を自家製にしたりなど良いクリスマスローズを育てる環境づくりに注力しているそう。

万人受けする可愛さを持つ「ピコティ八重咲き」。

Zoony Garden」(長野県)さんでは、クリスマスローズの生産育種と庭づくりを専門とするガーデンナーセリー。庭づくりの視点から種子で繁殖する健全な植物の選抜育種を目指し、矮性種で多くの花をつける上向き種の「ダブルハピネス」シリーズや、日本の庭を彩る「日本の色」シリーズなど、数多くの個性的な品種を発表しています。

故郷の山河に訪れる落日寸前の夕焼けの色を表現した「茜」。

「曽田園芸」(島根県)さんでは、耐暑性を高め、花後も崩れず良い形を保ち、鮮やかな花色とキレの良い鮮明な花柄を目指した育種を行っています。芳香系、利休系、多花系、大輪系、多弁系、などさまざまな品種のクリスマスローズが揃います。

原種を使わずにオリエンタリスhydから選抜した中輪多花性が美しい。

髙正園」(新潟県)さんでは、大鉢やガーデニングに華やかさを加える大輪種(センセーション)を中心に生産を行っています。特にクリスマスローズに適した用土の配合には、慎重な試験を重ね、近年の猛暑にも対応できるよう日々改良を続け、力を入れています。

野田園芸」(東京都)さんでは、華やかな「多弁系ダブル」、明るい色合いの「ゴールド交配系統」など新しい系統の作出をしています。上品な丸弁の花型、横向き花を中心に花立が多く長く楽しめるよう取り組んでいます。シングル、ダブルのほぼ全ての色を取り扱っている点も魅力。

広瀬園芸」(山梨県)さんでは、山梨県の標高700mの地で、山野草と共にクリスマスローズを栽培しています。山野草栽培で培ったノウハウと、夏場の涼しい環境を生かし、丈夫で花付きが良いのが特徴。オリジナル品種の「クレオパトラ」、「ソレイユ」、「ブラックマジック」にも注目です。

クリスマスローズふみ屋」(東京都)さんでは、海外のクリスマスローズの自生地であるヨーロッパや中国の視察を通じて育種の向上を行っている点がポイント。品種はガンマ照射を施し作出した株やハイブリッドとチベタヌスとの交配、ニゲルとリヴィダスやステルニーとの交配、属間交配が中心です。

種親親アイスダンス×花粉親ダブルファンタジーの交配で生育旺盛な「雪の花」(種間交配)。

「松浦園芸」(富山県)さんでは、ヘレボルスの豊富な遺伝資源のコレクションを用い「きれいな花がたくさん咲く」を育種のコンセプトに据えて「花もちが良く、丈夫で美しいクリスマスローズ」を届けるべく、オリジナルの交配に意欲的に取り組んでいます。

希少な灰青色ダブル花で、雄しべのもこもこ感が印象的な「トルカータススモーキーブルー」。特筆すべき魅力的な花色は、株分けのみでしか増殖することができないそう。

松浦園芸」(富山県)さんでは、ヘレボルスの豊富な遺伝資源のコレクションを用い、「きれいな花がたくさん咲く」を育種のコンセプトに据えて「花もちが良く、丈夫で美しいクリスマスローズ」を届けるため、オリジナルの交配に意欲的に取り組んでいます。

ニゲルとリビダスやステルニー、アーグチフォリウスなどを掛け合わせ交配した実生のニゲル交配「ニューハイブリッド」。

たくさんの草花と合わせた大変華やかなクリスマスローズの寄せ植えなど、今までになかったクリスマスローズの愉しみ方を提案している「カラーリーフのクリスマスローズ 松村園芸」(東京都)さんでも、花々が生き生きと咲いていました。

㈱ミヨシグループ㈱M&B Flora」(山梨県)さんでは、メリクロン技術の施行や日本の気候でも育てやすい品種の選抜・販売を基本に、こだわった花色、花形、長く育てても飽きの来ない「スタンダードビューティー」を目指しクリスマスローズの栽培を続けて行きます。

整った丸弁の大輪で淡いピンクから濃いピンクのグラデーション、咲き進むと赤味が増していき、横向きで咲くニゲルのハイブリッド品種。

クリスマスローズとシュウメイギクの生産・育種を行っている「大和園」(岐阜県)さんでは、シングルの育種に特に力を入れていて、庭に植えたり鉢で鑑賞する際に飽きの来ないたくさんの花を付ける株を目指し、栽培に取り組んでいます。

心惹かれる凛とした表情に多くのお客さんが立ち止まります。

クリスマスローズに関わって40年以上になる老舗ナーセリーの「横山園芸 Yokoyama Nursery」(東京都)さんでは、品種改良・育種に一番力を入れていて、国内でもよく育つ丈夫な花が得意です。中でも、「プチドールシリーズ」などの長く愛される普遍的な美しさ、可愛らしさを持った品種を目指し植物と向き合っています。

吉田園芸」(岩手県)さんでは、盛岡の地で昭和30年頃から花卉生産を始め、多弁花の育種に注力したクリスマスローズの栽培を行っています。今までにない花形、模様、色のバリエーションなどオリジナリティー溢れる作出を続けて行きます。

多弁ダブルよりもさらに花弁の枚数が多い花「超多弁ダブル・ピンク スポット」。

ラストは、クリスマスローズの一重咲きと八重咲きを中心に交配・育種し、オリジナル品種を専門に育種生産から販売まで一貫して行う「若泉ファーム」(東京都)さん。ニゲルとチベタヌスの交配種「絹」、外覆輪の「雅」など美しい丸弁やカップ咲きのハイブリッドなど多くの作出を手掛けています。

駆け足でざーっとお伝えしてしまいましたが、クリスマスローズや各ナーセリーさんにご興味のある方は、ぜひHPなどをのぞいてみて下さいね!

また、5月23日発売の「農耕と園藝 夏号」では、さらに詳しい展示会の様子や「新花コンテスト」入賞花・出品花展示についてもご紹介いたします。お楽しみに!

 

※HPのリンクはサイトが確認できたお店のみ表示させていただいておりますので、ご了承ください。

 

儚げでありながら、冬の寒さに強く、凛と咲く気高い姿が世界中の人々から愛されている「クリスマスローズ」。

「ウインターガーデンの貴婦人」とも呼ばれる美しい佇まいを無事に拝むことができ、私も心置きなく春をはじめられそうです。

ガーデンライフシリーズ クリスマスローズ
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より深くクリスマスローズの世界に浸りたい!という方には、ガーデンライフシリーズの「クリスマスローズ」もオススメですよ~!

 

冬と春の間の庭に咲く、わが家の庭のクリスマスローズ。よーく見ると、テントウムシも遊びに来ています。春はもうすぐそこですね!

 

それでは、また次回お会いしましょう!

編集部のづみたんでした。

 

 

取材協力・資料提供/クリスマスローズの世界展実行委員会、日本クリスマスローズ協会

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