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東京2020大会を夏花で彩る

第11回 2020年夏花の利用予定について

公開日:2020.7.23 更新日: 2021.6.15

全世界を震撼させているコロナ禍の影響で、2020年のオリパラ大会は2021年へと延期になりました。多くのイベントが中止されるなか、夏花を利用した花壇の植栽はほぼ予定どおり実施されることになっています。

今年も多くの夏花が生産され、オリパラ会場や関連施設周辺、公園などを彩ります。

2021年の本番に向け、どこでどういう取り組みがなされるか、本記事では、2020年夏の植栽計画と進捗状況についてご紹介していきます。

都立公園を夏花で整備する「花と緑の夏プロジェクト」

実施主体は東京都産業労働局。2016年から実施してきており、2020年が最終年度の予定です。

オリパラ大会に向け、国内外の人々を迎えて、スポーツや健康増進、交流等が行われる都の関連施設で、夏を花と緑で彩り、おもてなし機運を醸成しようとする団体に対して、実証試験で得られた優良な品目の花苗を供給し、都内産花きの利用を促進する目的で実施されてきました。

東京都温室鉢花部会による夏花の栽培(2020年6月22日撮影)「アフリカンマリーゴールド(昭島市)」
光が丘公園(2018年6月25日撮影)
東綾瀬公園(2019年6月26日撮影)

今年もアンゲロニアやペンタスなど40,000ポット弱の夏花が東京都内の花き生産者へ委託栽培され、シンボルプロムナード公園、水元公園、砧公園、小山内裏公園、神代植物公園、武蔵野公園、東村山中央公園、東綾瀬公園など約50か所の都立公園などに6月中下旬に植え付けられました。近くの公園へお寄りの際は色とりどりの夏花をお楽しみください。

武蔵野公園(2020年6月19日撮影、紐を用い等間隔に植え付け)

カヌースラローム会場に隣接する葛西臨海公園

事業主体は東京都建設局。展示広場花壇と観覧車南側花壇に大規模な夏花による植栽がなされます。

展示広場花壇では、6月中下旬から夏花の植え付けが始まりました。日本らしい風景をイメージした「白砂青松」を基本コンセプトにしたデザインだそうです。

夕陽に染まりつつある海、カヌー競技から流れをイメージする模様をサルビアやペチュニア、センニチコウなど夏を代表する定番品目で彩ります。

観覧車南側花壇はヒマワリを中心とした植栽となります。2か所で約4500m2もの場所をタネから育てたヒマワリで覆いつくします。

豪華で可憐な花の東北八重や、はるかのヒマワリ(阪神淡路大震災からの再生と復興の象徴となっているヒマワリ)など多くの品種が使われます。

一部のヒマワリ種子や苗の提供や栽培技術指導に、江戸川区や東京都農林総合研究センター江戸川分場も協力しており、地域をあげて取り組んでいます。

ヒマワリの播種作業(2020年6月10日撮影)

花壇苗の立体装飾を可能にする葛飾区発の「フラワーメリーゴーランド」「フラワーキャンバス」

葛飾区では、平成25年度から区の重要プロジェクトとして「花いっぱいのまちづくり」を進めてきました。

自治町会や商店街、学校地域応援団や地域のお花仲間など、様々なグループが、それぞれの目的のために、駅前や公園などの公共施設や、工場や病院などの身近な地域に開かれたまち角での花壇活動が広がってきています。

令和2年1月1日時点で、区内で132団体が150ヵ所で活動を行なっています。

葛飾区内の花壇などの状況
北野小学校学校地域応援団では、児童の登下校や放課後の安全安心のため、学区域にある区立金町公園に花壇をつくり、お手入れの傍ら児童を見守っています。

区では、花壇活動に必要な、種子や球根、花苗、用土や肥料などの支給や、移植ゴテやホースなど用具の貸し出しを行なっています。

このような中、活動団体や事業者、区で構成する「かつしか花いっぱいのまちづくり推進協議会(以下、協議会)」が、東京2020大会に向け大会機運を盛り上げ訪れる方々をおもてなしするため、東京2020公認プログラムに「花いっぱいでおもてなし」アクションで平成30年度から参加しています。

また、日比谷公園ガーデニングショーや臨海副都心「花と緑」のおもてなしプロジェクトなどでも、花でまちを彩る素晴らしさを発信しています。

この中では、協議会のプロジェクトチームで考案した公共空間への花の新たな展開手法、どこでも水やりおまかせ型立体花壇「フラワーメリーゴーランド」の紹介や実証試験も行いました。

立体的に花苗を104株植えつけ、200リットルのタンクを内蔵し太陽光発電で自動潅水を行うので、1㎡の場所があれば設置できます。

臨海副都心「花と緑」のおもてなしプロジェクト展示協力

昨夏「フラワーメリーゴーランド」の技術を活用した「フラワーキャンバス」に、協議会・区と技術協力協定を結んでいる(株)パナソニックのミストを搭載し、都市景観の向上と暑熱対策を提案しました。

今夏は植栽するペチュニアの一部に芳香性の品種を採用し、ミストの気流に花の芳香を加えます。反響はどのようになるでしょうか。

区役所前の「フラワーメリーゴーランド」と、その技術を活用した「フラワーキャンバス」
フラワーキャンバスへ芳香性のペチュニアを一部に植栽《ペチュニア・ヴァンサンカン ブルーピコティ(芳香性)、ペチュニア・さくらさくら、ペチュニア・桃色吐息、ペチュニア・おゆきちゃん》

葛飾区では、様々な修景の手法を用いて地域のみなさんと「花いっぱいでおもてなし」を進めます。

隅田川流域のボランティア団体(花守さん)による夏花の活用

公益財団法人東京都公園協会による取り組みで、隅田川のオープンテラスにある花壇等を夏花で飾り付けます。

中央区のさつき会、中央区福祉センター、明石町保育園、旧明石小学校、明石幼稚園、隅田川・神田花の会、江東区のきよす花組の7団体が参画し、夏の間、ジニアやペチュニア等を管理します。

コロナの影響で、植え付け作業は業者が5月下旬に行いました。

勝鬨橋付近の植栽(2020年6月19日撮影)

オリパラ会場が多く立地する臨海副都心で多くの企業が参画する「花と緑のおもてなしプロジェクト」

臨海副都心「花と緑」のイベント実行委員会(株式会社東京臨海ホールディングス、株式会社東京テレポートセンター、 臨海副都心まちづくり協議会、株式会社ゆりかもめ、東京港埠頭株式会社(事務局))が主催するイベントで、オリンピック・パラリンピック競技大会が多く立地する臨海地域で花と緑を活用したイベントを実施します。

2014年から開始し、具体的には、①造園・種苗・園芸関連企業団体や都民などと協働で、盛夏に満開となるサマーガーデンの制作展示、②花苗に関する技術を蓄積し、本大会開催に向け国内外へ情報を発信、③多くの来園者に楽しんで頂き、公園のほか地域や各業界の活性化を図ることを目的としています。

私ども東京都農林総合研究センターは、埼玉県農業技術研究センターと千葉県農林総合研究センターと協力し、修景花壇での実証展示に取り組みます。

これまでの記事で書いてきました底面給水型プランター、長期間景観性を維持する球根植栽技術、長尺植物による早期緑化技術、アサガオの利用技術など多くの技術を取り入れた花壇を作製します。6月中旬頃に花壇を完成させる予定です。ぜひ多くの方に足を運んでいただければ幸いです。

シンボルプロムナード公園での実証展示花壇の作製(2020年6月19日撮影)

夢の島セレクション100「応援花」による日比谷アメニスグループの挑戦

2020年のオリンピック・パラリンピックに向けて、会場となる公園や沿革の公園で開催期間中、暑さに負けず、きれいな花壇を提供できるように2017年より2019年まで東京都立夢の島公園にトライアル花壇を造って、より良い品種が選ばれてきました。

2019年7月29日には同公園で、公園管理、市町村の園芸担当者、種苗会社などを集め勉強会が開催されました。この取り組みの中で、夏に強い草花を地域住民・近隣企業などと植え付けるイベントを実施し、大会の機運醸成及び公園の認知向上を図りました。

夏花勉強会(2019年7月29日撮影)

このような取り組みを通じ、有望な夏花100種類を夢の島セレクション100『応援花』として選定しました。今年はその成果を活かし、夢の島公園を含む16か所の公園でセレクション100『応援花』花壇を造っています。

以下のように、東京都だけでなく、神奈川県でも夏花が植栽されます。6月上旬から9月下旬にかけて、多くの方に各公園オリジナルの花壇を楽しんでいただければと思います。

夢の島公園(2020年6月9日撮影)

☆参加公園☆

東京都:①夢の島公園、②大島小松川公園、③猿江恩賜公園、④亀戸中央公園、⑤中川公園、⑥東綾瀬公園、⑦尾久の原公園、⑧白金台どんぐり児童遊園、⑨亀塚公園、⑩高輪公園、⑪高松くすのき公園、⑫竪川河川敷公園、⑬宇喜田公園、⑭三田松坂児童遊園

神奈川県:⑮生田緑地、⑯峰山霊園

有望な夏花を多く輩出してきた種苗会社サカタのタネの取り組み

ふなばしアンデルセン公園は、千葉県船橋市にある総合公園です。2015年トリップアドバイザーの「世界の人気観光スポットテーマパーク部門」にて東京ディズニーランド、東京ディズニーシーに次ぐ国内3位にもランクインした人気スポットです。

この園内にある企業花壇コーナーにペチュニア「バカラiQ」を植えています。

ふなばしアンデルセン公園(2020年5月31日撮影)

バカラiQは、花径は約7㎝、草丈は生育環境により異なりますが、約30㎝です。

種子系のペチュニアの定番品種であるサカタのタネの「バカラ」シリーズを総合的に改良した新シリーズで、特に雨に強く、従来、ペチュニアが苦手としてきた晩春から梅雨、盛夏にかけて充実した花を咲かせ続けることが特徴です。

これまで利用しづらかった時期にペチュニアを楽しめる画期的なシリーズです。

ペチュニアは雨に打たれ、高湿度状態に置かれると、花や葉に付着した灰色カビ菌が繁殖し、花弁がべとついて溶けるなど、灰色カビ病が発生します。

その結果、観賞価値が著しく低下するため、この病害に強い品種が待望されていました。

ペチュニア「バカラiQ」シリーズ

※ふなばしアンデルセン公園では、新型コロナによる感染症拡大防止対策として2020年6月2日から平日のみ開園されております。詳細はホームページをご確認ください。

 

 プロフィール

岡澤立夫(おかざわ・たつお)
主任研究員(博士)。東京都で6年間普及指導員として現場指導にあたる。
平成17年からは花きの研究員として、屋上緑化資材「花マット」や地中熱ヒートポンプなどの省エネ技術ほか、花壇苗の屋内向け商品「花活布(はなかっぷ)」を開発。現在は、オリパラに向けた夏花の研究を中心に取り組んでいる。

 

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