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有葉花と直花

公開日:2020.5.7 更新日: 2021.4.22

カンキツ類の着花

カンキツ類果樹は前年枝の頂芽および腋芽が発芽して新梢を伸ばすが、その新梢が花芽を分化しないで栄養生長を行う栄養シュート(栄養枝)になれば発育枝であり、花芽を分化した生殖シュート(生殖枝)になる場合には有葉花枝直花枝になる。

有葉花枝は数枚の普通葉の形をした葉を展開し、そのシュートの頂芽は必ず花芽を分化し頂花となり、また条件によっては腋花も形成する。
直花枝普通葉の新葉を展開することなしに花をつける。

有葉花枝に分化した花を有葉花といい、また有葉花が結実したものを有葉果と呼ぶ。
直花枝に分化した花は直花といい、直花が結実した場合は直花果(実)と呼ぶ。
直花枝は新梢がわずかに伸びるが、普通葉の展開が見られないので、前年枝の結果母枝上に直接に花が分化着生したように見えるところから、直花と呼ばれている。

直花は、樹勢の弱い水平や下垂した枝の前年枝からの発生割合が高い。また着果数が多い表年には直花の発生が多い。
一方、有葉花の発生は樹勢の強い斜め上や上向きの枝からの発生が多い。

直花は落花(果)する割合が有葉花に比べてはるかに高く、ウンシュウミカンの例では、直花(果)の落果率が80〜90%以上になるのに対して、有葉花(果)の落果率は約70%であるという。

カンキツ類の花序

有葉花枝と直花枝は花序であり、カンキツ園芸では有葉花枝に頂花だけをつけた場合を単頂花序、頂花と腋花をつけた場合を総状花序、直花枝でも数個の花をつけた場合を総状花序と呼んでいる。
花序につく葉は苞葉であり、一般には普通葉よりも小さくなるが、普通葉と同じ形の場合もある。

有葉花枝の頂花と側花を抱える葉は普通葉の形をしているが苞葉であって、花芽を形成しない下位節の葉は普通葉であるとみなすことができる。
有葉果を収穫した後に残る果梗枝を、翌年以降の結果母枝とする場合には、この下位節の普通葉の腋芽を対象にしている。一方、直花枝では苞葉が鱗片状になっていると解される。

総状花序は植物形態学的には無限花序であり、カンキツ類の花序では頂芽が花芽になることから有限花序である。
したがって、有葉花枝も直花枝も集散花序に属するとみなし、単出集散花序とするのが適切と思われる。集散花序において頂花のみが分化して腋花が分化しない場合に、単頂花序になるとみなされる。

単頂花序はウンシュウミカン、ミカン類およびユズ類で出現率が高く、集散花序の出現率はブンタン類およびグレープフルーツ類で高いことが知られている。

 

『農耕と園藝』2014年9月号より転載

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