HOME 読みもの アグリニュース ナス科植物に世界的な流行する新興ウイルスを、簡便に診断する技術を開発 アグリニュース ナス科植物に世界的な流行する新興ウイルスを、簡便に診断する技術を開発 ToMMVナス病気LAMP 公開日:2023.11.9 2013年にメキシコで初めてトマトへの感染が確認されたトバモウイルス属のToMMVは、トマトを含むナス科植物に感染し、葉のモザイク症状や委縮、果実の壊死などを引き起こし、収量を著しく低下させます。最初に確認されて、わずか10年間でアメリカ、中国といった主要生産地で流行しており、植物どうしの接触や農機具を介して感染するだけでなく、種子を介して伝染することから、さらに感染が広がるのではないかと心配されています。 今のところ日本での感染は報告されていないとはいえ、2012年に検疫場で外国産ピーマンからToMMVが検出されており、より一層、検疫体制の強化が求められています。従来、ToMMVの検出は新型コロナウイルスの診断にも用いられてきたPCR法が用いられてきましたが、手順が煩雑な上、専門知識を要することが課題になっており、PCR法に代わる簡便な検査方法の開発が課題になっていました。 そこで東京大学の研究グループはLAMP法と呼ばれる技術を取り入れ、ToMMVの感染を診断する技術の開発に取り組みました。 イラスト/坂木浩子 LAMP法は、PCR法と同じように遺伝子を増幅して感染の有無を診断しますが、PCR法よりも高感度で、かつ簡便。速やかに診断できることで知られています。ただし、ToMMVにLAMP法を応用するには、塩基配列に応じて結合して遺伝子を増やす鋳型となるプライマーを作らなければなりません。研究グループはToMMVの変異株が広く持ちながら、近縁のウイルスが持たない塩基配列を特定し、これをもとにプライマーを作成しました。 このプライマーを用いて、実際にToMMVの検出を試みたところ、PCR法よりも10倍から100倍も高い感度で検出できました。感染していないのに感染していると判定する擬陽性、感染しているのに感染していないと判定する偽陰性を避けられることも確認されています。検査の手順は検査対象の植物を突いた爪楊枝を反応液に浸して反応液の変化を見るだけですから、実用化されればToMMVを水際で抑止していく上で有効なツールになると期待されています。 文/斉藤勝司 この記事をシェア 関連記事 2024.4.6 第6回 獣がいフォーラム 「市民の力で変わる 獣がい対策への新しいアプローチ」レポート(後編) 去る3月2日、表題のフォーラムが開催された。前編で紹介した基調講演に続いて行われ […] 獣がいフォーラム獣害 2024.4.5 第6回 獣がいフォーラム 「市民の力で変わる 獣がい対策への新しいアプローチ」レポート(前編) 生産者が丹精を込めて栽培しても、収穫前に野生動物に農作物を食べられては、すべての […] 獣害ヒグマ対策獣がいフォーラム 2024.4.4 第39回花卉懇談会フォーラム~新しい園芸植物の伝え方・使い方・作り方~ 2024年2月23日、表題のフォーラムが東京農業大学世田谷キャンパスにおいて開催 […]