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天敵の放飼増強法

公開日:2019.6.27

人間の生活に直接・間接に害を与える昆虫を害虫と言い、益をもたらす昆虫を益虫と言う。食性から昆虫を見ると植物食性のものを植食性昆虫、動物食性のものを肉食性昆虫と言う。園芸植物の害虫は植食性であり、この害虫への寄生者および捕食者は肉食性昆虫となる。この肉食性昆虫は園芸の害虫類を制御する天敵として働いているので益虫となる。天敵昆虫を積極的に利用して害虫を制御する防除法は天敵利用による生物的防除と呼ばれる。天敵の利用法は、外来の侵入害虫に対して導入した天敵の永続的利用を図る伝統的生物的防除法、大量増殖した昆虫を放飼する放飼増強法、土着天敵を利用する保護利用法などがある。

天敵の放飼増強法は、大量増殖した天敵を温室や圃場の作物に人為的に放飼して害虫を制御することを言い、その方法に大量放飼と接種的放飼とがある。大量放飼は放飼した天敵が害虫に寄生し、あるいは害虫を捕食することによって、直接に害虫を防除する放飼であり、接種的放飼は少量の天敵を放飼して自然増殖を図り、放飼個体から増殖した後代に防除を担わせる方法である。防除が必要な害虫に合わせて適切な天敵昆虫を大量に放飼するので、農薬散布のような利用であることから放飼増強法は生物農薬的利用と同義とみなされている。

この方法では、天敵を室内で大量に生産でき、常に供給できる体制があること、また天敵放飼の時期や密度が防除効果に大きく影響するので、技術的サポートがあることが望まれる。先進国では天敵生産会社が天敵を商品として販売している。

天敵の放飼技術としては、害虫の初期発生を確認してからの放飼、作物の定植直後から定期的に繰り返して行う放飼、およびバンカー植物法がある。バンカー植物法は天敵が寄生できる代替え寄主(代替え餌)が棲みついている植物を温室内に持ち込んで天敵を放飼する方法である。バンカー植物は害虫でない代替餌を維持・増殖する植物であり、天敵の銀行の役割を果たすのでバンカーと言う。

利用する天敵には捕食寄生者と捕食者とがある。

捕食寄生者:寄生バチと寄生バエがこれに属する。捕食寄生とは寄生者が寄主を必ず殺してしまう寄生である。親が寄主に産卵し、孵化した幼虫は寄主の栄養を取って成長し、寄主の体を抜け出して成虫になる。寄生者が寄主の体内に産卵する場合は内部寄生、寄主の体外に産卵する場合は外部寄生という。外部寄生では寄主は寄生時に殺されている。

捕食者:捕食者は他の生物を捕獲して餌として食べる生物で、直接に咀嚼して食べる者と針状の口器で害虫の体液を吸収する吸汁性捕食者がいる。天敵として利用されているのはナミテントウとダニである。

『農耕と園藝』2016年5月号より転載

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