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日本バイオスティミュラント協議会 講演会 「バイオスティミュラント資材を知るーアミノ酸・ミネラル型バイオスティミュラントー」(後編)

公開日:2023.11.2

2023年9月7日、8日の2日間にわたって「バイオスティミュラント資材を知るアミノ酸・ミネラル型バイオスティミュラント」と題した講演会がオンライン開催された。第一線でバイオスティミュラントの可能性を探る研究者、バイオスティミュラント資材を製造、販売する企業の担当者によってどのような講演が行われたのか。前編に続き、後半の2本の講演をレポートする。

『植物のミネラル栄養 ~必須元素から有用、有害元素まで~』

高知大学 農林海洋科学部 農林資源科学科 農芸化学コース
上野大勢教授

学生時代から植物に必要な微量ミネラルのマンガンや鉄、有害金属のカドミウムの吸収機構の研究に取り組んでいる高知大学の上野大勢教授は、講演の前半、三大栄養素(窒素、リン、カリウム)、ケイ素、マンガンについて解説した後、バイオスティミュラントに関連して微量要素の鉄の働きについて紹介した。

「鉄は自然界に非常に豊富に存在していて、土壌中のミネラルでは3番目に多いことが知られています。しかし、中性からアルカリ性の土壌では溶解度が低くなり、植物は簡単に鉄欠乏に陥ってしまいます。とくに世界の耕地面積の3割を占める中東からアフリカ北部の石灰質土壌では鉄は不溶化するため、鉄欠乏が作物の生育阻害の原因になっています」

そんな中性からアルカリ性の土壌にあっても鉄欠乏に陥らないよう、鉄を吸収する仕組みを進化させてきた。農業の現場では鉄欠乏の対策としてキレート鉄材が使われている。ただし、キレート鉄材は難分解性であり、合成時に毒性の強いシアン化物を使用していることなどの問題が指摘されている。

「自然界では微生物が分泌するシデロフォアといった鉄可溶化物質との錯体が鉄源になります。微生物型のシデロフォア鉄は生分解性という利点があるものの、合成が困難であったり、そのままでは植物が吸収できなかったりする難点があり、これまで鉄供給剤としては利用されてきませんでした。私たちはシデロフォアをモデルとした鉄供給剤の開発を進めています」

これまでに開発された人工シデロフォア鉄の効果を調べる試験栽培が行われており、従来からあるキレート鉄材に比べて、キュウリの鉄欠乏をより改善できることが確認されている。さらに人工シデロフォア鉄の添加によって植物の細胞膜で働く鉄を還元する酵素FRO1の発現が高まることも明らかになり、人工シデロフォア鉄によって植物が持つ鉄吸収能力も高めるバイオスティミュラントの効果がある可能性が示された。

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