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日本バイオスティミュラント協議会 講演会 「バイオスティミュラント資材を知るーアミノ酸・ミネラル型バイオスティミュラントー」(後編)

公開日:2023.11.2

『鉄栄養の吸収を高める鉄資材 ~環境ストレスによる潜在的鉄欠乏の発生と改善~』

愛知製鋼(株) 未来創生開発部 次世代あぐり開発室 室長
鈴木基史氏

鉄は土壌中に豊富に存在しているものの、酸化鉄、水酸化鉄、リン酸鉄となって水に溶けにくくなる。微量要素ながら必須元素であるにもかかわらず、土壌からの鉄の吸収が難しくなり、しばしば鉄欠乏が発生する。そこで愛知製鋼(株)は特殊鋼製造のノウハウを生かして、植物が吸収できる2価鉄供給剤「鉄力あぐり」、「鉄力あくあ」を開発した。

「生産者から『気温が下がると葉の色が薄くなる』、『曇天が続くと鉄力の効果が出やすい』というお話を伺ったことがあります。私たちは人工的に日照、温度を制御できる気象室でチンゲンサイを栽培して、鉄の吸収に関わる酵素の働きを調べました」

その結果、日照量が減り、気温が低下すると植物が持つ還元力が弱まり、鉄の吸収が難しくなることが明らかになった。そこで「鉄力あくあ」を与えたところ、植物の還元力を向上した。「鉄力あくあ」由来の鉄が植物に吸収されるだけなら肥料の効果に留まるが、植物の還元力を高めて、土壌からの鉄の吸収も向上する点はバイオスティミュラントの効果と言える。

こうした効果は小規模な栽培試験だけでなく、実圃場でも確認されており、低温により鉄の吸収が低下して、鉄欠乏特有の葉の色が薄くなったトマトに「鉄力あくあ」を与えたところ、葉の色が改善したという。また「鉄力あくあ」の施用により、キュウリ、イチゴ、アスパラガスの収量が増加することが確認されている。

さらに鉄欠乏の改善という観点から、愛知製鋼(株)は世界の陸地の約30%が鉄欠乏の起きやすいアルカリ性土壌であることに注目した。これらの土地で農業生産ができるようになれば、世界の食糧問題の解決に貢献できるはず。こうした考えの下、イネ科植物がムギネ酸を分泌して、鉄との錯体を作って吸収していることを参考に、鉄の吸収を促すムギネ酸資材の開発も進めている。

取材協力/日本バイオスティミュラント協議会
取材・文/斉藤勝司

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