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カルチべ取材班 現場参上

多品目栽培&アイデアあふれる商品群で販路をつかめ!

公開日:2019.3.18 更新日: 2019.3.19

農業はあくまでも1次産業、加工ありきでは目的を見失う

2013年に完成した加工所では、3人のパートさんがピクルス作りをしていた。実はここで作られる加工品こそが、「コスモファーム」を支える大きな存在になっている。その商品とはカラフルなピクルス。定番は8種類で、ニンジン、キュウリ、豆、切干大根、紫キャベツ、ゴボウ、ジャガイモ、ミックスのほか、季節商品もある。ピクルス以外は、オリーブの塩水漬け、塩レモンがある。

「見た目に美しいこと」だけでなく「お客様がすぐに食べられるように小さくカットすること」も加工品のポイント。

最初にピクルスを作り始めたのは、中村さんが千葉に農場を借りていたときだった。クズ扱いされる野菜を何とかできないかと考え、ピクルスを思いついたのだ。

「マルシェで販売することを目標に試作を重ねました。種類の違う野菜を2層にしたり、野菜のカットに凝ったり。ピクルス液の配合にもこだわりました」

 ビンやラベルのデザインを担当したのは裕太郎さんだ。直径4・5㎝、高さ14cmのスリムなボトルに、シンプルなラベル。現在の「コスモファーム・スタイル」が完成したのは2013年のことだ。

数種類の野菜を1本にまとめた、人気のピクルス。野菜によってカット方法も変えている。

このピクルスを青山のマルシェ「ファーマーズマーケット」で販売したところ、そのディスプレイも含めて評判になった。これがマルシェに来ていた高級食材店のバイヤーの目に留まり「うちで扱いたい」とオファーを受ける。その後契約が成立。

 さらに高級食材店でピクルスを購入したホテルのバイヤーから声がかかり、こちらも取り扱いが決定した。「販路の確保」は多品目少量生産を目指す農家にとって最大の課題だが、コスモファームのケースは、理想的な例かもしれない。

「ただし、忘れてはいけないのは、まず栽培ありきだということ。いきなり加工品から始めると方向がおかしくなってくる。原料がないから野菜を仕入れなきゃいけないとなったら、これは2次産業です。われわれは1次産業。もったいないの発想から始める、生産ありきの加工でなければいけないんです」

百貨店で野菜が扱われるようになったのは、香川県の職員が百貨店のバイヤーを「コスモファーム」の圃場に案内したことがきっかけだった。高級スーパー場合は、青山のマルシェでバイヤーが野菜を購入したのがはじまりだ。

加工品でなくても、見せ方次第で販路の糸口をつかむことはできる。中村さん自らが体現しているのである。

 加工所ではベテランのパート女性3人が、ゴボウを洗うところから出荷の準備まで、すべてこなしている。

今の加工所を作る前は、キッチンスペースも小さく、小鍋で何回にも分けてピクルス液を作っていたが、現在は大鍋でその日使うピクルス液をまとめて作っている。

新たに導入したコンベクションも大活躍で、空ビンの殺菌、ピクルスを詰めてフタをしてからの殺菌(75度で20分)をフル稼働でこなしている。この工程のおかげで、防腐剤なしでも常温で8ヵ月保存できるようになった。

コンベクションを導入しピクルスの殺菌などに活用。

出荷数は年間で1万5000~2万本ほど。今の体制ではこれが限界だという。

見せる、体験する
新たな農業スタイルが町おこしになる

今後やってみたいことについてうかがってみた。

「畑があって、ショップがあって、料理教室もあって。自分でカゴをもって畑を一回りして摘み取りもできる。そんな体験できる農場を個人でできたらいいですね。食育にも役立つし、村おこし町おこしにもなる。これからの活動目標にしていこうかと思っています」

 この春から、社員一名と研修生一名も加わって、「コスモファーム」はさらに賑やかになった。これまでも「やりたい」ことを実現してきた中村さんだからこそ、今後の活動がとても楽しみだ。

 

「農耕と園藝」2017年6月号より転載・一部修正
取材協力/(有)コスモファーム・中村敏樹・中村裕太郎
取材・文/古田久仁子

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