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松山でアボカドの産地化を実現する、 愛媛県松山市農業指導センター

公開日:2023.6.16

台風被害がきっかけで…

松山市での栽培は意外なきっかけで始まりました。1991年、台風2号が松山市に襲来し、柑橘農家に大きな被害をもたらしました。この時被災した農家を訪れた苗木業者が、お見舞いとして持参したのが「フェルテ」と「ピンカートン」、2種類のアボカドの苗でした。果たして愛媛の冬を越えられるのか、半信半疑で植えたところ、7〜10年後に実がなりだしたそうです。

そこへ訪れた松山市の担当者は、たわわに実ったアボカドを目の当たりにして、

「松山でも、アボカドは育つんだ」

と確信。「柑橘農家の経営を補完する新たな作物に採用しようと」考え、育苗をスタートします。こうして同センターでは2009年から市内の農家へ苗木の分譲を開始。現在も継続中で、同時に栽培指導も行ない、産地化に向けサポートを続けています。

松山市の農業指導センターで、アボカドの栽培技術の研究と普及に取り組む橋口慎太郎さん。

「1〜2本の方から数十本育てている方もいます。直売所や個人で販売したり、農協へ出荷したり、集荷団体に委託したりと、販売形態は様々。あくまでも柑橘がメインでアボカドはそれを補完する位置付けなのです」

と、農業指導センターの橋口慎太郎さん。

多彩な品種、民間育種も多数

早速、センターの圃場に植えられているアボカドを見せていただきました。
「こちらがベーコンです」

この記事の冒頭に登場する「ベーコン」は、果皮がなめらかな卵型の品種。果皮が薄く濃い緑色で、果肉はクリーム色。食べ頃になってもあまり色が変わりません。出荷時期が最も早く、松山では10月末〜11月初旬に収穫時期を迎えます。

「これがフェルテです」

果皮がなめらかで、比較的寒さに強い「フェルテ」。

洋梨型のフェルテは、他品種よりも果肉が多く、油分が豊富。比較的寒さに強い品種です。松山では11月中旬〜12月初旬に収穫期を迎えます。

「こちらがピンカートン」

果実が長く、寒さにやや弱い「ピンカートン」。

ピンカートンは、細長い洋梨型で、緑色の果皮はゴツゴツしています。果肉が多くクリーミー。寒さにはやや弱い性質があります。12月初旬〜1月初旬に収穫します。

「それから福徳利(ふくとっくり)というのもあります」

果実が長く、まるでとっくりのような「福徳利」

果実が細長く、まるでお酒を入れるとっくりのよう。ユニークな形の通称「福徳利」は、愛媛で見つかった系統とのこと。

日本では、まだ珍しいアボカドですが、メキシコ等海外から輸入されているのは大部分が卵型の「ハス」という品種で、世界には他にも実にさまざまな色や形の品種があることに驚かされます。

中央アメリカやハワイ等の産地では、自然交配による突然変異が生まれやすく、民間育種もさかんなのだとか。日本にはどんな品種が適しているのか、これからどんな品種が生まれるのか、まだまだ謎の多い作物でもあります。

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