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中国梨花粉輸入禁止 今こそ、ネパールナシの花粉を

公開日:2023.11.17

東京都稲城市 川清園 川島 實さん

25年前、川島さんがネパールで見出したヤマナシの樹。花粉樹としての有効性も実証済み。

火傷病で花粉の輸入が禁止に

2023年8月30日、農林水産省は中国において火傷病かしょうびょうの発生を確認。同国産の火傷病の宿主植物である、りんご属となし属の花粉の輸入を禁止しました。

「植物検疫統計」(農林水産省)によれば、2022年の花粉の輸入量は、りんご属の231kgに対し、なし属は606kg。開花時期の人工受粉に欠かせぬ花粉は、栽培農家の生産効率と果実のできばえを左右する存在で、輸入花粉を頼みに栽培している農家も少なくないだけに、全国のリンゴやナシの産地や生産者の間に衝撃が走っています。

そんな中、ナシ農家の仲間たちに「こんな時こそぜひ、うちのネパールナシを育てて、その花粉を使ってほしい」と呼びかけているのは、東京都稲城市のナシ農家、川清園の川島 みのるさん(81歳)です。

川島さんは、ナシ栽培130年の歴史をもつ稲城で栽培を手がけて60年。東京都立園芸高校で果樹栽培を学んでいた時代から研究熱心で、民間育種や独自の肥料設計、栽培技方法の研究も続けてきました。

そんな川島さんは、1998年11月、ネパールで教育支援や農業指導をしていた園芸高校時代の友人を訪ねることに。カカニ村へ向かう途中、山道でマイクロバスが故障して、スペアタイアが届くまで、その場に3時間待機することになりました。そこで周囲を散策していた時、森の中で見事なヤマナシの樹を見つけたのです。

「樹の肌がきれいで枝がよく伸びていて、葉っぱが厚くてじつに見事だった」

川島さんは、これを稲城でナシの花粉樹として使えるのではと考えましたが、これを日本で利用するには、正式な手続きが必要です。そこで2004年、改めてネパールを再訪。同じ場所で野生のヤマナシの樹を探して穂木を採取。植物防疫法に則った輸入検査を経て、2007年12月28日に、植物防疫検査の合格証明と。苗木6本を受け取りました。

この苗木を育てて取り出した花粉を、自園のナシに受粉したところ、見事結実。毎年大きくまん丸な果実を、たくさん実らせるようになったのです。その詳しい経緯については、「農耕と園藝」2017年7月号をご覧ください。

等間隔で・きっちりと・大きく・まん丸に結実[2016年9月25日/岡本譲治撮影]。
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