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【関西 野菜】イタリア野菜

公開日:2023.11.30

しかし、イタリア野菜でも日常的に利用されるようになったものも存在する。ズッキーニやルッコラ、バジルがそうだ。

筆者が若い頃、イタリア料理が好きで自分でも調理してみようとイタリア料理のレシピ本を買ったとき、食材欄にこう書いてあったのを覚えている。「バジリコ(なければシソの葉で代用可)」。

当時はバジリコ(スイートバジル)は一般的ではなかったので、スーパーなどでも見かけることは少なかった。代用として、同じシソ科のシソの葉(オオバ)を利用したらいいということなのだが、今考えると、バジルとオオバはまったく別物で代用になどならないだろうと思うのだが、当時はこれが苦肉の策だったのだろう。

しかし、20年程前にイタリア料理がブームとなり、街中にイタリアンレストランが増えて、家庭でも簡単なパスタ料理などが作られる頻度が増えていくと、スイートバジルはオオバでは代用できないということがわかり、生のスイートバジルがどのスーパーにも並ぶようになっていった。乾燥バジルもあるのだが、料理によっては生でないと雰囲気が出ないものもあるのでイタリア料理の定番野菜として認知されるようになったようだ。

スイートバジルはイタリア料理でも頻繁に利用されるハーブで、利用シーンも多かったため定着したのだが、他のイタリア野菜はなかなか定着しなかった。

ズッキーニやルッコラは外食では利用頻度が高く、他に代用品がないためある程度は定着していった。今では家庭料理でも利用されるようになったため定番の野菜として認知されている一方、チコリ、ケール、フェンネルなどは外食でも利用はされているのだが、登場する頻度はそれほど高くない。そのため限られた需要しかなく、家庭ではほとんど利用されることはない。ロマネスコは形状は特殊だが、カリフラワーやブロッコリーで代用可能なので利用頻度は増えないままだ。トレビスも紫キャベツで代用されることが多い。

それぞれ国産もあるが、日本では馴染みがないのでズッキーニ、ルッコラ、バジルを除いては輸入品も多い。

大阪市東部市場に入荷したトレビスの入荷状況を例に見てみると、ここ5年は年々減少傾向で、4~5年前までは国産の入荷もあったがコロナ禍以降一気になくなった。また輸入品もコロナ禍の影響で外食の落ち込みと海外からの荷物が減り、重油高や円安の影響も相まってここ数年は激減している。

入荷量が少ない品目が多いため詳細のデータはご紹介できないが、馴染みのない品目はどれもトレビス同様に入荷量は減少傾向である。

珍しい野菜や特殊な野菜は、なければないで何とかなるし、他の品目で代用が利くものは代用されるため、よほど料理と強く結びついていないと継続的な需要は生まれない。

筆者はフェンネルとイワシのパスタ料理などが好きなのだが、日本では馴染みがないようでレストランでもメニューで見かけることは少ない。

カプレーゼやマルゲリータに使われるバジルのように、「この料理には、この野菜が欠かせない」という料理がブームとなれば食材のニーズも生まれるだろうが、現状のままでは馴染みのないイタリア野菜の需要が拡大する日が来るのは、残念ながらまだまだ先になりそうだ。

著者プロフィール

新開茂樹(しんかい・しげき)
大阪の中央卸売市場の青果卸会社で、野菜や果物を中心に食に関する情報を取り扱っている。
マーケティングやイベントの企画・運営、食育事業や生産者の栽培技術支援等も手掛け、講演や業界誌紙の執筆も多数。

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