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渡辺和彦の篤農家見聞録

腐植物質を使って発根促進 キュウリの長期収穫を実現

公開日:2024.1.1 更新日: 2023.12.19

腐植物質の働きとは

なぜフミン酸やフルボ酸を含む液体を作物に施用するとうまく根が活着するかについては、本誌2021年秋号での連載「栄養素の新常識」の「腐植物質、フルボ酸、フミン酸について正しく学ぶ」で詳しく説明したが、もう一度復習してみよう。

海外の研究によれば、腐植が含まれている堆肥などのフミン酸が根に入ると、オーキシンと結合し、根の細胞内に存在するATPを分解する。そのときに発生するプロトン(H)を細胞外に放出し細胞外を酸性にすると、細胞外にある好酸性酵素群が活性化し、細胞壁の緩みと発根、根の伸張成長を促進し、新たな根が発生するとある。反応式で示せば、ATPADPPiで、植物体内によく効く無機リン酸が多く生じる。無堆肥施用区での無リン酸区は収量も皆無になるのだが、堆肥施用区は収量低下が軽微であることは、本誌2021年夏号の連載「栄養素の新知識」の「三要素試験から学ぼう」で58年間の具体的収量データとともに紹介しているとおりだ。もちろん堆肥のなかには、フミン酸、フルボ酸が生成して長年のリン無施用区でもリンが効いていた。

竹の堆肥で
さらなる効果を狙う

なお、文男さんは「HS-2®︎プロ」を使用する以前から、竹堆肥を自作・販売もしておられ、仲間の農家でも農作物の発根が増えたと言われる。竹堆肥と聞けば、私などは、タケノコが多くのケイ素を含むため(550μg/100g(出典:鈴木、食品の微量元素含有表、第一出版、1993))、その効果とも思ったが、調べてみるとケイ素はタケノコの葉に多く含まれているが、竹部分はケイ素だけでなく炭素(C)以外のあらゆる元素含有率は非常に低い(矢内ら、日本土壌肥料学会誌、2016)。ただ培地としては多孔質で適度の水分も含みやすく、高いC/N比で乳酸菌の増殖を進める効果があることは広く知られている。微生物の力で、微生物体内でのATP分解が多くなって無機リンを培地中に多く放出し、竹堆肥の施用で写真に示すように白い根が多く出ていたことも十二分に考えられる事実である。

白い根が細かくびっしりと出ている。
栽培している品種は、東ハウスが「まりん」(埼玉原種育成会)、西ハウスが「クラージュ2」((株)ときわ研究場)
5月中旬に定植した苗が9月中旬になっても樹勢は衰えず、花も咲き続けるようになったという。
自家製の竹堆肥。

また表5に示すように一般にはキュウリは通常9月になると収穫が終了となるが、橋本さんのキュウリは10月末まで収穫可能となっており、長期収穫が実現できている。これにも「HS-2®︎プロ」が大きく働いていると言えるだろう。

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