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渡辺和彦の篤農家見聞録

腐植物質を使って発根促進 キュウリの長期収穫を実現

公開日:2024.1.1 更新日: 2023.12.19

 

日進月歩の
腐植物質の研究

腐植物質の研究は日本では最近はじまったばかりだが、世界を見渡せば、非常に多くの研究がなされている。ちょっとネットなどで研究論文を探せば、様々な論文を読むことができる。防除効果とキュウリの生育収量と農薬との効果比較を実施したエジプトの実験結果を紹介する(脚注①)。バイオガス肥料(牛ふん堆肥をメタン発酵の嫌気下で発酵分解させ、その後、乾燥させて製造されたもの)からフルボ酸を抽出し、既報に基づき精製、フルボ酸濃度(50、75、150ppmの3濃度、もちろん最適濃度)を選択試験結果に基づき決定して、キュウリに施用する標準的な殺菌剤を比較として用いた。対照農薬は、うどん粉病(Sumi-8 30cm3/100L)、べと病(リドミル250g/100L)である。

これらの論文の結論によれば、キュウリの生育・収量もうどんこ病、べと病とも、もちろんフルボ酸散布区が優れていた。橋本さんの結果も同じであるが、フルボ酸濃度が橋本家の使用した「HS-2®︎プロ」の1000倍希釈液とは大きく異なる。「HS-2®︎プロ」のフルボ酸はフェノール性水酸基(OH)が多く、高い生理活性能を維持しているため、薄くても効果が出ているのだ。エジプトの論文では、腐食物質の化学抽出法に濃い濃度の水酸化カリウムを使用している(脚注文献②参照)ため、多くのフェノール性OHにKが結合していた。「HS-2®︎プロ」は化学薬品を使わず、特許取得済みの酸化還元反応器を用いる方法でフミン酸、フルボ酸を抽出しているため、その論文と同じフルボ酸と表記しても活性力は高いことが明らかで、これは非常に重要なことのため、ここに強調しておく。

 

著者による追記

本稿とはやや話題がそれるが、著者には大事なことと思われるので触れておきたい。

医薬品と認められるには、非常に厳密な審査過程が必要だが、化粧品の認可基準も医薬品に準じて厳しく、日本化粧品工業連合会(粧工連)が作成する「化粧品の成分名称リスト」に記載されたもの以外の成分では、化粧品原料として使用することができない。この名称は大前提として、アメリカ合衆国の業界団体(PCPC)が制定する化粧品成分の国際共通名称「International Nomenclature of Cosmetic Ingredient(略称INCI))」への登録が必要となる。そこで、ケーツーコミュニケーションズが販売しているフミン酸、フルボ酸を含む「HuFuferme®︎」は、眼刺激性試験、累積刺激および感作試験、24日間閉塞ヒトバッチテスト、口腔粘膜刺激性代替試験、復帰突然変異試験、細胞毒性代替試験の6つの安全性に関する評価を実施している。2019年12月にINCI(インキ)名を取得し、2020年3月には粧工連の成分名リストにも「HuFuferme®︎」が(スギ・ヒノキ)幹発酵エキストして掲載され、オリジナル原料として認定されている。食品に対しては口腔粘膜刺激性代替試験、復帰突然変異試験、細胞毒性代替試験等により安全性を担保している。

農業用の「HS-2®︎プロ」とは異なり、「HuFuferme®︎」はレトルト殺菌もされていて、健康食品や化粧品の原料として販売されている。ケーツーコミュニケーションズからの情報によれば、同製品をイヌ・ネコのペット用として販売されている民間業者から、動物の皮膚病や疾病などの治癒効果の報告もあるそうだ。海外の文献、例えば脚注②③の論文では、腐植物質は植物だけでなく、家畜やペット、人間の病気を治癒する力があるという。吉森保大阪大学教授の「長生きせざるをえない時代の生命科学講義(副題:最先端の生命科学を私たちは何も知らない)」(2020年12月日経BP発行)のように、筆者は多くの病気が治りうる日が近い将来に実現できるのではと感じていることを付記し、本稿を閉じたい。

 

脚注①:Said M. Kamel et al. Fulvic Acid : A Tool for Controlling Powdery and Downy Mildews in Cucumber Plants. 雑誌名 Int. J. Phytopathology. 03 (02) 2014, 101-108)
脚注②:Simona Hricikova et al. Humic Substances as a Versatile Intermediary. Medicinal Value of humans Substances. Published : 23 March 2023)
脚注③:J.Pan,etal.Induced apoptosis and necrosis by 2-methylfuranona-phtoquinone in human cervical cancer HeLa cells.雑誌名 Cancer Detect.Prev.,24(3)2000,266-274

 

取材協力/はしもと農園
取材・文/公益財団法人日本ヘルスケア協会・土壌で健康部会技術顧問
元兵庫県立農林水産技術総合センター環境部部長
農学博士(京大) 渡辺和彦

 

※この記事は「農耕と園芸」2023年12月冬号の連載を転載したものです。

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