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【関東 切り花】チューリップ

公開日:2024.2.11

大田花きでは2018年度から取り扱い本数が年々増えており、2022年度は2018年度比で126%である。

取り扱い本数が伸びている理由の一つに栽培の機械化がある。ある生産地では、オランダ式の機械を導入し、栽培や収穫後の出荷作業をオートメーション化した。栽培面では、球根を定植したボックスが、可動式のテーブルに載って収穫場所に自動で移動する。そのため従業員が動き回る必要なく効率的に収穫できる。出荷作業は、目視で行っていた規格選別を機械が画像認識で行い、スリーブに入れるところまで行う。こうしたシステムを導入することで生産および出荷作業スピードを上げ、毎年出荷本数を増やしているのだ。

販売面では個人需要が伸びている。大田花きの販売先カテゴリー別の品目シェアデータを見ると、専門店で年々チューリップが拡大している。シェアが伸びているきっかけの一つには、コロナ禍で自宅に花を飾る生活者が増えたことが考えられる。チューリップの認知度の高さ、手頃な価格、花弁の開閉、茎の伸長など動きを楽しめる点が自宅に飾るには相性が良かったのではないだろうか。アフターコロナの現在は、パステル調の黄色~オレンジ色のグラデーションがかった品種や、くすんだピンク~茶色の落ち着いた雰囲気がある品種が人気だ。

また、球根つきチューリップの需要も高い。例えば、原種を思わせるようなミニサイズの品種は、近年のナチュラル志向とマッチし人気が高まっている。大手専門チェーン店では花器とセットで販売している。カラーバリエーションや球根つき、インテリアを意識した花器など、トレンドを反映した品揃えが充実している。

量販店やスーパーマーケットでは、チューリップの季節感とカラフルな色が売り場を引き立てている。ただし売り場が暖かい室内の場合、花首が伸びたり、茎が曲がったりして管理をしにくいケースがあるようだ。そこで前処理剤を使い日持ち保証をしているチューリップをあえて取り扱う店舗もある。前処理によって、花首の伸長や茎の曲がり、葉の黄化が抑制され、日持ちも延長する。店舗で管理しやすく、売り場も整って見えるとバイヤーに好評だ。

ただし、すべてのケースにおいて前処理を施したチューリップが好まれるわけではない。専門店と量販店で販売の仕方は異なる。それぞれの売り場に適った花を提供することで、より販売しやすくなるのではないだろうか。

著者プロフィール

倉光里佳(くらみつ・りか)
株式会社大田花き花の生活研究所研究員。株式会社大田花きでロジスティック部を経て現職に至る。花き業界唯一のシンクタンクとして調査、情報発信事業を行う。業界マーケティング資料であるフラワービジネスノートを制作・販売している。

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