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渡辺和彦の篤農家見聞録

リン酸の葉面散布でナスを安定生産

公開日:2023.10.24

リン酸の葉面散布でなり疲れを解消

高知県の抑制栽培ナスは8月に定植して翌年6月末までの10ヵ月間にもわたる長期栽培だ。古田社長によると、この間、細根は出たり消えたりを繰り返すと言う。細根が消えると植物体内のリン酸や石灰、マグネシウムなどのミネラルの貯金を使いながら、頑張って子孫を残すために花芽を作るが、使い果たすと次に細根が再生するまで、お休みの期間になる。この期間が、いわゆる「なり疲れ」現象だ。有名なドイツの有機化学者であるリービッヒが「最小養分の法則(ドベネックの桶)」で言及しているように「生物の成長はその生物が利用できる必須栄養素のうち最小の物に依存」している。長期栽培作物で施設栽培の果菜類のように栄養成長と生殖成長が同時進行する作物では、まさにリン酸が足かせになって生育を阻害しているケースが多いわけだ。 古来、篤農家と呼ばれる人の多くは、この「なり疲れの谷間」から、いち早く回復させる技術を身につけている。陸野さんの場合は(株)古田産業の「キング・ハーベスト」(表3)というリン酸を中心とした葉面散布肥料を10日おきに施用することで「なり疲れ」 の谷を浅く、また間隔を短くしている。

葉面散布肥料の「キング・ハーベスト」は25年前、(株)古田産業の古田社長がナス栽培の名人とともに作り上げた葉面散布肥料だ。リン酸、カリ、各種微量要素を含んだ粉状液肥(「キング・ハーベスト A」)と、微生物の純粋培養液に窒素成分を配合した液肥(「キング・ハーベストB」)を混用し、300~500倍で使用する。古田社長によれば、「化学農法と民間農法の融合ですね」とのこと。バイオスティミュラントと言えば、 ナス名人の陸野さんは「キング・ハーベスト」以外にも「ぐんぐん伸びる根」(アサヒ飲料 (株))という資材も定期的に液肥に混用して好成績を挙げている。ナスの樹が若々しく保たれ、すすかび病などの病気も少ないとのことだ。

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