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【関西 果実】紀の川柿

公開日:2023.11.30

これを『紀の川柿』と同時期の10~12月入荷だけに絞ってみてみると、

入荷量は同時期だけの比較でもシーズン平均と大きな差はないが、単価はシーズン平均の半値程度となっている。これとの比較だと平均で1.8倍くらいの価格になっているから、高級と言えるだろう。

たいへんな手間がかかるので希少なのだが、果肉が不溶化した渋のせいで真っ黒になってしまうため、見た目が悪く受けつけられないという人もいたようだ。

見た目が悪いという理由で売れないものを販売するときに、表現を工夫して上手に消費者の心をつかむ説明をすると口コミで広まっていき、売れるようになるということが少なからずあると思う。

『紀の川柿』も食味が良いため、日本料理の店で水菓子やゼリー寄せなどに用いられていた。出された客ははじめはぎょっとするものの、「黒砂糖をまぶしたような」、「黒蜜をかけたような」という表現で説明すると逆においしそうなイメージが湧き、食べると今まで食べたカキにはない食感で、とても甘くておいしいので印象に残るからSNSなどでも話題となっていったようだ。

それでTV番組などでも取り上げられて徐々に認知度が高まっていき、インターネット通販でも話題となり、海外からの引き合いも強まっていった。

しかし手間がかかる上に賃金や資材代が上がっており、労働者不足と生産コスト高で生産量は年々減少している。『紀の川柿』が減った分は通常栽培が増えているのかというと、カキ全体の生産量が減少しているのだからそうとも言えず、今後はますます希少なものになってしまうのではないだろうかと懸念している。

著者プロフィール

新開茂樹(しんかい・しげき)
大阪の中央卸売市場の青果卸会社で、野菜や果物を中心に食に関する情報を取り扱っている。
マーケティングやイベントの企画・運営、食育事業や生産者の栽培技術支援等も手掛け、講演や業界誌紙の執筆も多数。

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