農耕と園藝 online カルチべ

生産から流通まで、
農家によりそうWEBサイト

お役立ちリンク集~カルチペディア~
カルチべ取材班 現場参上

イチゴの流れを変える秩父の「あまりん」 埼玉県秩父市・和銅農園

公開日:2023.10.1 更新日: 2023.9.25

おいしい。でも収穫量は3分の1

あまりんは、群馬県で育成された「やよいひめ」を種子親、福島県育成の「ふくはる香」を花粉親として交配。埼玉県のオリジナル品種として埼玉県農業技術センターで2016年に育成され、2019年2月14日に「埼園い3号」として品種登録されました。これと同時期に発表された品種として、「埼園い1号」の「かおりん」があります。いずれも埼玉県限定品種。現在は他の都道府県で、栽培することができません。

「あまりん」と同時期に開発された、「かおりん」も栽培中。

和銅農園では、品種登録に先立ち、8年前の試験栽培の段階から「あまりん」の栽培を始めていました。果形の美しさ、味の濃厚さ、香りの高さ。いずれも優れた品種なのですが、ひとつ栽培上の難点を抱えていました。

「とちおとめが1株に20果以上なるところ、あまりんは6果しか出ない。収穫量が3分の1だから、これまでの品種の3倍の値段で売らなければ、採算が採れないないのです」

和銅農園のある秩父市には、32軒の観光農園があり、首都圏を中心に毎年多くの顧客が直接訪れています。農協出荷ではなく、農園を訪れた人が直接摘み取る観光農園と、直売や通信販売で遠方の顧客にも販売。なので味わう人の反応が、ダイレクトに伝わってきます。

栽培を始めた頃は、その存在を知る人も少なく、なかなか販売量が伸びませんでした。他のイチゴに比べてなぜ高いのか、納得できない人もいました。ところが、

「毎週日曜日、必ずあまりんを買いに来る高齢のご夫婦がいて、『孫がこれでないと食べないんだ』と。車の中でお孫さんが待っていて、そこで全部食べてしまう。同じ日にもう一度買いに来ることもあります」

収穫できる粒数が少ない分、味わいが濃縮されているので、他のイチゴにはないパンチのある味わいがあるのです。一度食べてしまうと、孫が他のイチゴを食べなくなってしまう。多く常連客の間で、そんな現象が起きていて、改めてこの品種の底力を感じたのでした。

1 2 3 4 5

この記事をシェア