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イチゴの流れを変える秩父の「あまりん」 埼玉県秩父市・和銅農園

公開日:2023.10.1 更新日: 2023.9.25

新型コロナで大ピンチ。ところが…

最新の品種を最新の環境制御型のハウスで、丁寧に育て、着々と生産量を増やしていた2020年の春、新型コロナウィルス感染症の影響で、秩父を訪れる観光客が激減。毎年来ていた常連客も姿を見せず、せっかく実っても摘む人がいない状態に。これまでにないピンチに見舞われます。田口さんは、ECサイトを立ち上げ、自ら収穫したイチゴを宅配で販売するなど、新たな顧客開拓にも乗り出しました。

すると、

「『今年は行けないから、イチゴ送ってくれる?』『孫に送ってほしい』。そんなオーダーがだんだん増えてきました」

コロナ禍が起きて3年。徐々に摘み取りのお客さんも回復してきました。その一方で、発送の注文もどんどん増えています。

送り先は沖縄から北海道まで全国各地に広がります。コロナ禍をきっかけに、「あまりん」の存在を知り、「どんなイチゴだろう?」と取り寄せてみたところ、その味わいに驚き、また翌年もオーダーする……そんな人が増えているそうです。取材に訪れた3月中旬も、直売所に発送用のイチゴの箱が大量に積まれてスタンバイしていました。

直売所では、発送用のイチゴの箱がスタンバイ。

「それでもイチゴが足りなくて、お断りすることも少なくありません。なのでもう1棟、ハウスを建てます。次は300坪。それもまたあまりん専用です」

あまおうやスカイベリーなど、生産性に優れた大量出荷や遠隔地への輸送に耐える大果系の品種とはまた別に、「あまりん」のように、小粒で味わい深く個性的な品種が各地で生まれています。好きな品種は人それぞれ。和銅農園のような都市近郊の観光農園は、消費者が未知の新品種に初めて出会う場所でもあります。

「いずれ権利の存続期限が過ぎたら、あまおうも作ります。埼玉県の新品種べにたまの栽培に向けて準備中。兵庫県のあまクイーンも導入したい」

かつて埼玉県はイチゴ生産量No.1でした。現在は生産量に勝る栃木や福岡にその座を譲っていますが、産地としての歴史は古く、育種や栽培技術も高いのです。
品種のポテンシャルを活かし、味と質で勝負。1万株を育て、来シーズンはさらに増産します。

「秩父へ行くなら、あまりんを食べよう!」

和銅農園を起点に、日本のイチゴ界に新しい流れが生まれています。

2棟目のあまりん専用のハウスを増設。今シーズンは、さらに生産量を増やしていく。

 

2023年3月16日取材
取材・文/三好かやの

 撮影/岡本譲治

和銅農園 https://www.wado-nouen.jp/

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