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島根発。反収倍増 トマトの「しだれ仕立て」

公開日:2024.3.1

脇芽と主枝を入れ替える

さて、「しだれ仕立て」のはじまりは20年以上前。原さんが普及員時代に始めた家庭菜園でした。

「勤め人が家庭菜園で作業できるのは休日しかありません。1週間後に畑へ行くと、トマトの脇芽が伸び放題。なんとかならんかな」

そこで原さんは、そんな脇芽をあえて伸ばして生かそうと考えました。参考にしたのは、昭和56(1981)年、千葉県農業試験場の青木宏史さんが発表した「連続2段摘芯整枝法」でした。

トマトの1本、2本仕立てでは、主枝以外に伸びる脇芽をこまめに掻く作業が必要です。ところがこの方法では、果房のすぐ下につく脇芽をそのまま伸ばし、主枝を摘芯するというもの。捻じった枝は果実の重みで自然に垂れ下がっていきます。原さんはさらにこの作業を繰り返し、トマトの樹全体の見た目がしだれ柳か桜のように見える「連続捻枝『しだれ仕立て』」という整枝法を編み出しました。

水稲育苗の後作として、7.2×40mのハウス3棟でトマトを栽培。

【しだれ仕立ての方法】

 以下は原さんが考案した「しだれ仕立て」の主な流れです。

1回目の捻枝の方法。★

 

2回目の捻枝の方法。★
5~6回の捻枝が可能。最終的にしだれ桜のような形に。★

【しだれ仕立ての全体の流れ】
①第1果房直下の脇芽を主枝と入れ替える。
②捻枝した元主枝は2段果房の上に葉を1枚残して摘心し、脇芽はすべて取り除く。
③主枝に切り替えた①の第1果房直下の脇芽を、再度主枝に変更する。
④捻枝した元主枝は、3段果房の上の葉を1枚残して摘心し、脇芽はすべて取り除く。
⑤主枝に切り替えた③の第1果房直下の脇芽を再度主枝に変更する。
⑥捻枝した元主枝は、4段花房の上に葉を1枚残して摘心し、脇芽はすべて取り除く。
⑦捻枝する毎に同様の操作を繰り返して、下に垂れ下げる枝を1段果房ずつ増やしていく。
※節間が短い品種や草勢が弱い場合は、2段果房直下の脇芽から始める。

1回目の捻枝で2段、2回目で3段、3回目で4段……と、回数を重ねるたびに、果実をつける果房の数が増え、収量もあがります。1本仕立ての場合、格段の果房の開花日は異なりますが、捻枝を繰り返すと、同じ日に開花する果房が複数できるのも特徴です。

「しだれ仕立ては他の整枝法に比べて、労力が2倍かかります。でもトマトは2倍以上取れる。ということは、10aのハウスで20a分の収量が見込めるわけです」(原さん)

資材が高騰して、ハウスの新設や増設が難しくなっている昨今、同じ面積で2倍の収量が得られる「しだれ仕立て」は、設備費をかけず、トマトのポテンシャルを存分に生かして、収量を上げられる有効な整枝法といえるでしょう。

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