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カルチべ取材班 現場参上

島根発。反収倍増 トマトの「しだれ仕立て」

公開日:2024.3.1

農家の女性たちの活躍の場に

「かつては小さな田んぼで農家のお父さん、お母さんが一緒にコメを作っていました。ところが圃場整備が進んで田んぼも機械も大きくなった。お父さんは大型機械に乗るけれど、なかなかお母さんの出番がない。それなら活躍の場を作ろう!」
そこで始まったのが、ハウスの施設園芸でした。

合わせて10棟のハウスでトマト、イチゴ、ブドウを栽培。育苗施設を利用したハウスでは、移動可能なトロ箱栽培と、反収の高い「しだれ仕立て」が大活躍。このふたつの組み合わせは、大規模稲作に取り組む農業生産法人が、育苗用ハウスや地域の人材を活用するための有効手段でもあるのです。

現在ハウスで栽培しているのは、栄養価が高く、機能性野菜としても評価されている中玉トマトの「フルティカ(タキイ種苗)」と、全農のオリジナル品種で、糖度の高さに定評のあるミニトマト「アンジェレ」。栽培がはじまった当初は、1本仕立ての斜め誘引で栽培していましたが、現在は「しだれ仕立て」を導入しています。

リコピンの含有量が多い「フルティカ」。
果形が愛らしいミニトマト「アンジェレ」。★

取材に訪れた9月中旬、作業場では地元の女性のみなさんが、選果作業を行っていました。丸い中玉トマトの「フルティカ」と、ミニトマトの「アンジェレ」を出荷中。オリジナルのロゴ入りの袋に詰め、地元の直売所や市場へ出荷しています。

150haの圃場とハウス栽培を連携させ、大規模かつ効率的な農業経営を営む「のきの郷」では、3年前から職員の募集を始めました。現在5人を雇用して若手の育成にも力を入れています。非農家出身でトマトを担当している前嶋さんもその一人。9月はイチゴの苗の定植時期でもあるので、ハウスを行ったりきたりして大忙しの様子でした。

トマトの選果場は、地元の女性たちの活躍の場に。

近年、トマト栽培は高設ベッドを配した養液栽培が当たり前。環境制御型のハウスやオランダ式の堅牢なガラスハウスで栽培を始める事例も増えています。しかし、資材費や燃料費が高騰する中で、ハウスの新設や増設に踏み切れない人が多いのも事実。原さんは、「しだれ仕立て」は、規模拡大をしなくても、収量と品質を高められる有効な手段と考えています。

トマトには多様な品種が存在する中で、枝が太く、節間の短い品種は捻じりにくいので、できるだけ枝が太くなりにくく、節間の長い品種を選ぶのがポイント。栽培規模や人員の数に応じて、多彩な品種に対応できると考えています。

「今はミニと中玉がメインですが、大玉品種でも濃度を調整して絞り気味に栽培すれば、高糖度トマトの栽培も可能だと考えています」(原さん)

大規模化が進む稲作地帯で、既存のハウスを活用して収益性の高いトマト栽培を。島根で生まれたトマトの「しだれ仕立て」は、さらに広がる可能性を秘めています。

2023年9月20日取材
取材・文/三好かやの
撮影/杉村秀樹
★印の資料・写真提供/原 卓

農事組合法人のきの郷 https://nokinosato.com/

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